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明治・大正・昭和初期の軍人・政治家の話が多め
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追い手に帆かけて(2)

海の神様金毘羅さん。
海上安全にご利益があるため、船乗りからの信仰が篤い。





香川の辺りを通行する船は、金毘羅さんに奉納する初穂料やお賽銭、御神酒を樽に入れて蓋。
それに「奉納金毘羅宮」という幟をくくりつけて海に流していた。
塩飽諸島の辺りの潮流の関係で、大体は金毘羅さんに近い海域に流れ着く。
これ、「流し樽」と言いまして、流れ着いた先であったり海に漂っている樽を見付けた漁師なんかが拾って金毘羅さんに届けていたそうです。

で、この流し樽を海軍でもしていたそうで。
そうなんだと思ってさ。
岡田貞寛『海軍思い出すまま』によると、昭和13(1938)年、著者が新少尉で戦艦金剛に載っていた時も瀬戸内海を呉から小松島に行く著中に御賽銭を入れた樽を流していたそうで。
以下引用。


ただし(※土原註:樽の)中に現金は入っていない。
二斗ぐらいの醤油か味噌の空樽を熱湯で洗い清め、
「奉納 一、金拾圓也、大日本軍艦金剛」と墨書した半紙を納め、
海水が入らないように鏡をしっかり閉めて、その上に木の角柱を立て、御幣を麻糸で縛って海に流した。
昔は現金を入れたが金ぴらさんに届かないことがあって、約束手形?に変わったのだと聞いた。
<略>

樽が拾われると、前に書いたように金ぴらさんへ届けられる。
持参するのが中身だけ郵送するのか知らないが、遠い他県から一々持って行く訳には行くまい。
神社はこれを受け取ると、お礼と十円の領収書を金剛に送ってくる。
金剛ではそれと引き換えに郵便為替で送金するという段取りである。
<略>

主短現七期の北島秀治郎君のエッセイ集「侏儒の戯言」の中に、

戦争中戦艦大和が讃岐沖を通った時、
やはりお賽銭の金額を書いた紙を入れた樽を流したという話を同艦の乗員から聞いたと書いている。






金毘羅さんから送られてきた御札は艦内神社にお祀りされていたそうです。
前近代的な昔の風習というか、近代以降でも漁師であったり一般船舶であったりでされていた印象があったので、軍艦でもこういう事してたのかとちょっと驚きが…
昭和になってもこうしたゲン担ぎがされてたんですね。
本書には海上自衛隊でも同じことをしていると書かれていて、あ、そう言われたら10何年か前に私も聞いたことあるわ、それ。

というか船乗りはゲン担ぎとかジンクスとか大事にするよなあ…^^;
船は女人禁制だとか、猫を乗せるとか(船の守り神)、オムライスに乗せるグリーンピースの数だとか(奇数)。





女人禁制は船の神様が女神であるため(嫉妬されて悪い事が起こると言われる)。
猫は船の守り神。

奇数は海軍どうこうというより、日本古来の風習から来ているものだと思う(中国から来た陰陽思想ですが)。
奇数=陽、偶数=陰で、奇数の方が縁起が良い。
なので五節句、

 1月7日(人日:七草)、3月3日(上巳:桃)、5月5日(端午:菖蒲)
 7月7日(七夕:竹)、9月9日(重用:菊)

はいずれも奇数が重なるめでたい日なんですねえ。
1月7日?
1月1日は?ということですが、これは元旦ということで特別で別枠になるらしい。


財部彪が英国駐在を終えて帰国する際、水雷艇霓の回航委員長に任命されています。
責任者として霓で帰ってきた。

音読みは想像がつくけれど、水雷艇の名前は音じゃねえなあ。
何と読むのか分からず字通を見たのですが、「にじ」です。





虹ね。
これ、雌のにじだそうですよ。

メス!?(笑)

虹に雌雄ってあるんかい。
確か『聯合艦隊軍艦銘銘伝』だったと思うけれど、船=女神ということで霓の方が選ばれたのでは、という話が載っていた。


間に挟まっている桜は間違い写真ではありません。笑
虹は去年の7月に撮影したもの。2重になっていた。
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Comments

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2016-04-03 20:09 
object #401[Edit]
お久しぶりです。

金毘羅さんに樽を流すのは海軍の映画にも描かれていて、戦前の潜水艦1号という映画に結構詳細に出てきます。
どの国の海軍もゲンを担ぎますから、海軍は風習の宝庫ですよw
2016-04-03 20:58  >objectさん
ヒジハラ #402[Edit]
ご無沙汰しております。

おー、そうでしたか!
映画でもそういったシーンがあるのですね!
…ってよく読んだら戦前じゃないですかw(流石…

今某所(笑)で見てきましたが、そうそう、あんな感じの樽です(笑)
潜水艦なら人数が限られるのでその場で徴収できますが、大艦だと三千人強の乗員からお賽銭を給与天引きするのは大変なので、臨時軍事費で落としたのでは?とありました。
確かに俸給額に応じて三千件を超える事務処理をするとか(しかも手作業…)、主計科的にはどうだろうという感じですよね^^;
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